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書:那須野 彩子

 昨年開かれた野球のワールドカップ(WBC)で、日本代表選手として活躍したラーズ・ヌートバーという選手がいます。アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフです。ヌートバーは野球選手として優れているのはもちろんのこと、明るく前向きな性格でチームのムードメーカーとしても活躍しました。「どうやったらヌートバーのような素晴らしい人が育つのか」と、両親に質問があったほどだそうです。
 今回の「人を愛し、人に愛される人になりなさい」という言葉は、ヌートバー選手のお母さんが、ヌートバー選手によく語りかけていた言葉だそうです。この言葉で大事なのは、「人を愛し」が、「人に愛される」より先にあるということです。「人に愛される人になりなさい」とはよく言われる言葉です。そして、そうなりたいと考える人も多いと思います。ですから、「どうすれば人に愛されるか」ということを、私たちは一生懸命考えます。一方、「どうすれば自分が人を愛することができるのか」ということは、あまり考えないままに置き去りになっているのではないでしょうか。
 「愛される」は、たとえば「好かれる」とか「認められる」と置きかえてもいいかもしれません。周りより優れたところを自分に見つけようとしたり、それを目立つようにアピールしてみたり、あの手この手で「愛される」ための努力をします。しかし、時にはそれが過剰になって、自分や人を傷つける結果になってしまうこともあります。
 この言葉から私たちが問われているのは、「人から愛されたい」という身勝手な思いに自分自身が振り回されて、「私が人を愛する」という大事なことを忘れてはいないか、ということです。
「人を愛する」の「人」には、「自分」も含まれています。ある仏教の先生は、「いいところも悪いところも丸ごとあなた自身じゃないですか。丸ごとの自分のことを愛せなかったら、どうして人を愛せるのですか。」とおっしゃっていました。

2月

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