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こころの掲示板
1月
書:有賀 心音
新しい年を迎えることができました。新年といっても、いつもどおり時間が流れただけですが、新年を通して自分に成る「けじめ」をつけることが大事です。
さて、今月の掲示板の言葉は、一九八〇年代の名曲『恋に落ちて…』の歌詞です。楽曲は、想いを寄せる相手に自分の本当の気持ちを伝えられないままに終わる、切ない恋の物語になっています。歌詞の主人公は自分の想いを相手に届けたくて、思い切って電話をかけますが、途中で手を止めました。当時は、今のようにプッシュではなく、一回一回ダイヤルを回していたので、相手につながるまで時間がかかりました。きっと、ダイヤルを回す間にいろんなことが脳裏によぎったのだと想像します。
ところで、昨年、オーストラリアでは暴力や自殺、いじめの温床となる有害な投稿から子どもを守る目的で、十六歳未満の交流サイト(SNS)の利用を禁止する法案が成立しました。豪政府は「これは世界をリードするSNS禁止法だ」としています。
SNSの問題の核心は「匿名性」です。正体を知られないことを良いことに言いたい放題が許されています。そして中傷していた側は、風向きが変わることで中傷される側に変わります。
楽曲が発表された時代と今の時代を比べると、便利で快適になったことは言うまでもありません。とりわけ歌詞にある「私の思い」を届けることはIT化の飛躍により容易になりました。ただその反面、余裕を失い、衝動的で、殺伐とした人間関係が横行する時代になったことも否めません。
ダイヤル回す手を止めるように、考える、悩むという勇気が、今の時代は必要なのかもしれません。
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